私が呼吸法と出会ったのは2002年でした。当時、うつ病と診断され、数年間は薬物療法と並行して様々な治療方法を探索していたころです。図書館の書庫に白隠禅師の「夜船閑話」を見つけ、朝な夕なにその呼吸法を実践し、その他の呼吸法や坐禅などの方法で良くなり、数年間は薬を服用することなくすごすことができました。小康を得ている間は呼吸法を行うこともなく仕事や家庭生活を行っていました。
ところが会社事業環境の変化や家庭環境の変化などからでしょう、2015年から心身の調子が極端に悪くなりました。
筆者の不眠症
前回のこともあり、呼吸法や運動などで回復を試みましたが一向に良くなる気配がありません。医師からは神経症に伴う不眠症でうつ状態と診断されました。苦しい状態が2年以上続きました。これからの生き方として改善できる方法を模索しました。沢山の本を読み、思考の癖・運動・食事・タッピングなど色々と試してみましたが、丹田呼吸が病んだ心身の状態を改善を実感できる方法でした。そこには、丹田呼吸をすることによって生じる体や心の微妙は変化を感じて、自分で納得できる法則を見つけることができました。まだまだ、新しい発見がありますが、呼吸法に伴ういくつかの効果をまとめてみました。
丹田呼吸は今ある不健康な状態を即効性をもって改善に導いたり、習慣化することで心身の体質改善へ導く健康法と感じています。
観音流丹田呼吸の特徴~習慣化しやすい丹田呼吸
1.いつでも・どこでもできます
呼吸法の効果は即時的効果もありますが、習慣化することでより顕著な効果がでます。
座禅姿勢(結跏趺坐・半跏趺坐)の姿勢しかできなければ、呼吸の鍛錬は狭まり、習慣化しにくくなります。
観音流丹田呼吸は通勤電車の中や通勤途中の歩行中、授業や会議の合間でもできるので、1日の内何度も
できますし、結果として習慣化しやすくなります。
2.簡単です
複雑な体の動きを必要としません。
数種類のポイントを抑えるとできる、簡単な丹田呼吸です。
3.即効性と継続性そして体質改善の3つの効果が期待できます。
<即効性>
自律神経(交感神経・副交感神経)をコントロールできるので即効性があります。緊張やパニックや不安など、
危急に対応する場合に有効です。
<継続性>
丹田呼吸がある一定時間を超えると、セロトニンが合成されます。セロトニンは不安や緊張を和らげます。
セロトニンが体内に合成されることにより、不安や緊張に対して継続した効果が得られます。
また、セロトニンは夜に睡眠ホルモンであるメラトニンに変化して不眠症の改善にも効果があります。
<体質改善>
習慣化することで、交感神経・副交感神経の双方が鍛えられメリハリのある行動のできる体質へと変化します。
観音流丹田呼吸 Ⅰの型
腹式呼吸で行う丹田呼吸です
効果:自律神経系の中でも特に副交感神経を鍛え、副交感神経に関する効果が表れます
緊張や不安の軽減・不眠症の軽減などに効果があります。
入眠前・イライラもやもやしているとき・心を静めたいとき
1.姿勢
座禅を組んだ姿勢・あぐらの姿勢・椅子に座った姿勢・立った姿勢 いずれの姿勢でもできます。
いずれの姿勢も、背筋は伸ばして、その他の部位は力を抜いて下さい。
仰臥姿勢(仰向けで寝る)でもできます。この時は手足を伸ばして全身脱力して下さい。
目は閉じるか、半眼(薄目を開ける)にして下さい。
※最初は座った状態(座禅・あぐら・椅子)から始めることをお勧めします。
2.意識
自分の体の重心が、丹田にあるように意識します。
また、考えたり感じたりするのも丹田で行っているように意識します。
※意識できないときは、丹田を指先で軽くトントンとタッピングすると良いでしょう。
3.息を吐く(呼気)
秒数を数えながら鼻から細く長く息を吐きます。この時、丹田のある下腹部から押し出すように息を絞り出します。
苦しくなる手前まで絞り出します。・・この時横隔膜は上に上がり副交感神経を刺激します。
※慣れてくるにつれて、秒数を増やしていきます。
4.息を吸う(吸気)
呼気の秒数の半分の秒数で息を吸います(例:呼気が10秒なら吸気は5秒で)。
秒数を数えながら鼻から息を吸いますが、まず下腹部の力を抜くと自然に鼻から空気が入ってきます。
(丹田辺りにストンと空気が入ってくるように感じます)
さらに腹筋を前に出すように膨らませて吸気します。・・この時横隔膜は下がり交感神経を刺激します。
3と4を繰り返します。
5.時間
1回10分~40分がお勧めです。
■呼気時間:吸気時間の感覚が身に付いたら秒数は数えなくても大丈夫です。ひたすら丹田と呼吸に集中しましょう。
■3と4、また4と3の間に息を止める時間を数秒もうける方法もあります。
3(息を吐く)後に息を止めると、リラックス感が続きます。
4(息を吸う)後に息を止めると、氣力がみなぎります。
※※心臓に疾患のある方は、呼吸法について医師に相談して下さい。
観音流丹田呼吸 Ⅰの型のQA
Q1:どうして数を数えるのですか?
A1: 呼吸していることに集中し、雑念を少なくするためです。
Q2:どうして呼気と吸気の時間の割合は2:1なのですか?
A2:現代社会はストレスが多いので、緊張・不安の軽減を主とするために呼気を長くしています。
2:1をマスターできて、呼気・吸気の効果が体感できるようになればバランスを個々人で
調整してもらえれば良いと考えてます。
Q3:雑念が湧くのですがどうしたらよいですか?
A3:丹田に底なしの壺があると想像し、雑念が生まれたら丹田の壺に放り込むように練習して下さい。
あとは、数を数えることお腹の膨らみお腹の縮みを意識することに立ち返って下さい。
観音流丹田呼吸 Ⅱの型(腹式呼吸+胸式呼吸)
観音流丹田呼吸 Ⅰの型ができるようになって行います。
呼気・吸気の時間を可能な限り長くします。
腹式呼吸では吸いきれない空気を胸式呼吸を使い限界まで肺に空気を入れ、そして吐きます。
効果:自律神経系の副交感神経と交感神経の双方を鍛えます。
緊張や不安の軽減・爽快感などの効果があります。覚醒感・やる気・集中力などをアップします。
1.姿勢
座禅を組んだ姿勢・あぐらの姿勢・椅子に座った姿勢・立った姿勢 いずれの姿勢でもできます。
いずれの姿勢も、背筋は伸ばして、その他の部位は力を抜いて下さい。
仰臥姿勢(仰向けで寝る)でもできます。この時は手足を伸ばして全身脱力して下さい。
目は閉じるか、半眼(薄目を開ける)にして下さい。
※最初は座った状態(座禅・あぐら・椅子)から始めることをお勧めします。
2.意識
自分の体の重心が、丹田にあるように意識します。
3.息を吐く(呼気)
秒数を数えながら鼻から細く長く息を吐きます。この時、丹田のある下腹部から押し出すように息を絞り
出します。
吐き切れなくなって、更に3~5秒息を止めます。・・この時横隔膜は上に上がり副交感神経を刺激します。
4.息を吸う(吸気:腹式呼吸)
呼気の秒数の半分の秒数で息を吸います(例:呼気が20秒なら吸気は10秒で)。
秒数を数えながら鼻から息を吸いますが、まず下腹部の力を抜くと自然に鼻から空気が入ってきます。
(丹田辺りにストンと空気が入ってくるように感じます)
さらに腹筋を前に出すように膨らませて吸気します。・・この時横隔膜は下がり交感神経を刺激します。
5.更に息を吸う(吸気:胸式呼吸)
更に胸式呼吸で鼻から息を吸い、胸を大きく膨らませ、3~5秒息を止めます。
3~5を繰り返します。
6.時間
1回10分~40分がお勧めです。
■呼気・吸気の秒数を少しずつ秒数を増やすように意識してみましょう。毎日意識して行っていると自然に秒数が増えていきます。秒数が増えていくと自然に活力が湧いてきます。秒数を増やそうとすると吐き切って止める・吸い切るって止めるという運動が行われます。この運動のおかげで交感神経・副交感神経が鍛えられていきます。双方が鍛えられることにより動の力も静の力も強くなり、意識や行動にメリハリが効くようになります。
※※心臓に疾患のある方は、呼吸法について医師に相談して下さい。
観音流丹田呼吸 Ⅱの型のQA
Q1:どうして胸式呼吸をするのですか?
A1: 自律神経のバランスを整えるためです。副交感神経だけを鍛えるのではなく、
交換神経も鍛えて、落ち着きと行動との双方をバランスよく生活にいかすためです。
Q2:秒数の目安はありますか?
A2:性別・年齢、運動歴などにより随分と異なるので、何秒が良いとはいいにくいですね。
一つの目標としては1分間1呼吸、すなわち呼気40秒 吸気20秒です。
当然、いきなりは無理なので呼気10秒-吸気5秒から初めて少しずつ、ゆっくりと
のばしていけたらいいと思います。
観音流丹田呼吸 Ⅲの型 (歩行の型)
~歩きながら行う丹田呼吸です~
歩行通勤・歩行通学・買い物など通常の歩行の際に、丹田呼吸ができます。
効果:自律神経系の中でも特に副交感神経を鍛え、副交感神経に関する効果が表れます
緊張や不安の軽減・爽快感などの効果があります。
呼吸運動と歩行運動を同時にすることで、リズム運動によるセロトニンの増加が期待されます。
1.姿勢
背筋を伸ばして歩きます。
歩き方は特に意識しなくても結構ですが、ウオーキングの動作をとるのも良いでしょう
2.意識
自分の体の重心が、丹田にあるように意識します。
また、考えたり感じたりするのも丹田で行っているように意識します。
3.息を吐く(呼気)
歩数を数えながら鼻から細く長く息を吐きます。
この時、丹田のある下腹部から押し出すように息を絞り出します。
苦しくなるギリギリ手前まで絞り出します。・・この時横隔膜は上に上がり副交感神経を刺激します。
4.息を吸う(吸気)
呼気の時の歩数の半分の歩数で息を吸います(例:呼気が10歩なら吸気は5歩で)。
まず下腹部の力を抜き、一気に肺に空気を入れ、次にお腹を膨らませます。
さらに、胸式呼吸で肺を膨らませます。・・・この時横隔膜は上に上がり交感神経を刺激します。
※上記吸気を呼気の半分の歩数で行えるよう吸気の早さを調整して下さい。
★★道は平坦とは限らないので、上り坂の時の呼気の歩数は少なくなります。
歩いているうちに呼気・吸気の歩数が変化するので、色々な考え事をしなくて歩くこと
呼吸することに集中できます。
★★慣れてくると呼気・吸気の歩数を増やしていきましょう。呼吸法も訓練と考えて、少し苦しくても
しっかり息を吐き切って、そしてしっかり息を吸うことを繰り返すと、交感神経と副交感神経の双方
が鍛えられます。
★★歩行の型ができるようになると、1日のうち、丹田呼吸をすることのできるシチュエーションが大幅
に増えます。