古来より丹田呼吸は気力を充実させる修行として、心身の不調を解消する治療法として、色んなバリエーションをもって継承され、そして進化してきています。

丹田呼吸はどのような効用があるのでしょうか?また、なぜそのような効果がでるのでしょうか?昔から言われている効果について、近代になって科学的な検証ができるようになり、少しずつ生理学的な理由がわかってきています。古来より体に良いとされてきた丹田呼吸が納得のいく形で証明されてきていることは、その効果を体感してきている私にとっては喜ばしいことです。


<丹田呼吸の効果>

●副交感神経を優位にし、落ち着いた(リラクックス)状態にする。

●気力を充実させる

●集中力を高める

●内呼吸(肺でのガス交換)の効率を高めて、体内の酸素循環が高まる。頭がスッキリする。

●幸せホルモンであるセレトニンを分泌する。

●体内の燃焼効率を上げ、ダイエット効果がある。

など

<病気/体調不良との関係>

丹田呼吸を行うことで、

・自律神経失調症の改善

・うつ病/うつ症状の改善

・不安症の改善

・不眠の改善

・パニック障害の改善・対処

・運動機能の向上

・あがり症への対処

・頭痛の改善

・整腸作用

・肩こりの改善

など、様々な効果があるといわれています。


<丹田呼吸の一例>

◆おへその下 約5cm下側にある丹田というツボに意識を置く。

丹田は不思議な場所で、古来よりここに体の重心を意識すると体は安定し、気持ちを丹田に集中すると落ち着きがでてくるといわれています。呼吸をするときに、心配事や急ぎの予定や宿題や今日あった嫌なことなどの雑念が湧くと心が大きく波立ちます。丹田を「底なしの壺」と表現する人もいます。意識を丹田に集中すると、雑念は丹田の中に吸収されて消えていき、心の波立ちを抑えることができます。

◆姿勢

座禅を組んだ状態(結跏趺坐:あぐらを組んで、右足を左腿の上に置き、左足を右腿の上に置く/半跏趺坐:片足だけを腿の上に置く)、またはあぐらで座ります。背筋は丸めずにピンと伸ばした状態で行います。

◆呼吸

口を閉じて鼻から腹式呼吸をします。

 ★鼻呼吸と口呼吸

呼気の時は、丹田を中心に腹筋に力をいれてお腹が凹ませながら横隔膜を上げて息をゆっくりと吐き出します。

吸気の時は、腹筋の力を抜くと自然に肺に空気が入ってきます。空気が自然に入った後に、腹筋に力を入れてお腹が前に突き出すことにより横隔膜を下げて空気を肺に入れます。

結果、腹式呼吸では横隔膜が上下に大きく動くようになります。

<たくさんある丹田呼吸法>

世に丹田呼吸を称する呼吸法はたくさんあります。たくさんの書籍やウエブ上で見られる丹田呼吸は姿勢や丹田の位置、呼吸のやり方など1つとして全く同じものが存在しないといっても過言ではないでしょう。

例えば姿勢。坐禅の姿勢を型とするものもあれば、椅子に座った状態や、肩幅に足を広げて立った姿勢、仰臥した姿勢など様々です。呼吸の時に体を動かさないものもあれば、独特の動きを加えるものもあります。

丹田の位置についても、おへそから指二本分や三本分下側の位置と言ったり、へその下2センチ3センチ5センチと様々です。

また、呼吸の間隔についても秒数を決めたり、途中で呼吸を止める動作を加えたりと様々です。

恐らく、丹田呼吸を行い研究されてきた方々が自ら教わってきた形を実践の中で少しずつ変化させて、自らとして最も良い丹田呼吸ということで紹介されているのでしょう。

さまざまな丹田呼吸の中で、共通する特徴を挙げるとわずか3つしかありません。

すなわち、その3つが丹田呼吸の肝ともいえそうです。

<丹田呼吸の3つの共通点>

その3つの共通点とは以下のとおりです。

1.丹田に意識を集中する

2.腹式呼吸をする

3.呼気を長くする

<丹田呼吸の効果概論>

【自律神経との関係】

●アクセルを踏みっぱなし

自律神経は交感神経と副交感神経でできています。交換神経は神経バランスのアクセルの役割を持ち、副交感神経は神経バランスのブレーキの役割を持っています。ストレスが過度にかかると交感神経が優位な状態が続き、アクセルがかかりっぱなしの状態がつづき、自律神経のバランスが崩れます。耳鳴り・めまい・頭痛・うつ・不眠・動悸・消化不良・便秘・下痢・肩こり・冷え性・ほてり・生理不順・頻尿など様々な形での症状が現れます。自律神経の乱れによってこれらの症状を起こす場合を自立神経失調症といいます。

●アクセルを緩めるために

自律神経は、生命を維持するため無意識下で働く神経系なので随意に働かすことができません。ただ一つ、呼吸によってのみ自律神経である交感神経と副交感神経をコントロールすることが可能です。

交換神経がストレスで常に優位にある場合、呼吸法によって交換神経を抑えて副交感神経を高めてストレスが起因する自律神経失調症を緩和することが可能です。

●腹式呼吸がアクセルをコントロールする

その代表的な方法が、丹田呼吸の基礎となる腹式呼吸です。腹式呼吸はおなかを膨らませて横隔膜を上下することにより肺が膨張収縮を行いガス交換を行う運動です。 この横隔膜周辺には自律神経が集中しています。元々呼吸は自律神経の作用により無意識に行われますが、意識をして呼吸することもできることから、意識をした呼吸により自律神経をコントロールすることができます。すなわち、腹式呼吸により自律神経失調症を改善することができます。

呼気で横隔膜が上がるときには、副交感神経が刺激され心身が落ち着きリラックスした気持ちになります。吸気で横隔膜が下がるときには交感神経が刺激されて心身が活発になり興奮や緊張した気持ちになります。

腹式呼吸で呼気・吸気の長さや強さをコントロールすることにより交感神経・副交感神経の活性化のバランスを調整することができ、心身を理想的な状態に近づけることができます。